自治体の「合葬式墓地」開設広がる

産経ニュース (2008.12.3)
墓を管理、維持できなかったり、経済的な事情から墓が建てられない市民を対象に、複数の故人を共同で埋葬する「合葬式墓地」の整備を進める自治体が増えている。
少子化核家族化の影響で市民のニーズが高まった結果だが、無縁墓の増加を食い止めるほか、土地を確保しやすいなど、自治体側のメリットも大きいのが理由。
すでに開設した大阪府内の4市や、平成25年に整備する兵庫県宝塚市のほか、大阪、神戸両市も検討しているという。
兵庫県宝塚市北部の山間部にある「宝塚すみれ墓苑」は、市都市整備公社が約20万平方メートルの敷地に計6500区画の墓を整備。今年8月に一部の利用が始まった。合葬式墓地は平成25年に完成し、約30万〜40万円で販売されるが、市生活環境課にはすでに市民から数十件の問い合わせがあるといい、同課は「少子化核家族化で墓に対する価値観が変化しており、今後も増えるだろう」とみている。

平成25年に合葬式墓地を整備予定の「宝塚すみれ墓苑


 「霊園ガイド」(六月書房)の酒本幸祐編集長によると、合葬式墓地は平成元年ごろから新しい形態として注目され始めた。公営墓地では同10年に「小平霊園」(東京都)で初めて整備され、現在は全国約20カ所にある。
関西圏では昨年4月、大阪府門真、守口、四條畷、大東の4市でつくる事務組合が運営する「飯盛霊園」が合葬スペースを開設。大阪市が来年、市設霊園の中に合葬式墓地を設ける予定で、神戸市は開設に向けた検討を始めている。


 合葬式墓地が増える理由は、子供のいない夫婦や単身者でも納骨が可能なことに加え、費用負担が少ないことが大きい。
墓を守る人がいなくなっても無縁墓として処分されず、墓石代や使用料など費用がかかる通常の墓と違い、約20万〜50万円程度と低額。最低5万円で納骨が可能な
飯盛霊園」では、今年11月中旬までに約400件の申し込みがあったという。


 自治体側にとっても、無縁墓が増加すれば清掃などの管理料の未納が増えるが、合葬式墓地なら管理面の影響は少なくてすむ。複数の故人を共同で埋葬するため、住宅地が多い都市部でも場所が確保しやすい。


 酒本編集長は「合葬式は民間で需要が高く、それが波及した形なのだろう。公営墓地は安心感から人気が高いものの、税金の使い道の公平感を保つため、昭和50年ごろから新設が難しくなった。需要があるのに区画を供給できない公営墓地が増えており、合葬式墓地はそうした現状を解消するために増えているのではないか」と分析している。